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先日、歌野晶午さんが書かれた「死体を買う男」を読みました!

おお!それはミステリー小説の代表作ですね!
まだまだコロナ禍ということもあり、在宅の時間が多いと思います。そんな在宅時間を有効に使って、たまにはミステリー小説でも如何ですか?
ということで、今回はミステリー小説のご紹介です。
歌野晶午さんとは
1961年生まれ。千葉県出身。
高校時代は漫画研究部に所属していた。
高校卒業後、東京農工大学農学部に進学。
同大卒業後、編集プロダクションで働く傍ら、小説の執筆をスタートさせる。
1988年、『長い家の殺人』で作家デビュー。
その後『白い家の殺人』、『動く家の殺人』と三部作として出版。
エッセイを読んだことで島田荘司氏との親交がスタート。
歌野のデビューには島田氏の推薦があったようだが、ペンネームの晶午も彼の考案らしい。
ちなみに本名は歌野博史。
あらすじ
江戸川乱歩の未発表作品が発見され、ある雑誌に掲載された。
それは南紀白浜での学生による自殺事件をめぐる推理小説だった。
自殺した彼は直前まで投宿していた旅館で毎夜女装をするばかりか、月を眺め、詩を朗読し、泣いていた。
そんなある夜、彼の首吊り自殺が見つかる。
しかし、第一発見者である地元住民が警察を呼びに行き、戻って来るとあるはずの死体がない。
この一連の事件にたまたま同じ旅館に泊まっていた主人公、江戸川乱歩が遭遇する。
不思議に思った彼は、友人である萩原朔太郎と事件解決に動き出す。
一方、この推理小説を書いたというアマチュア小説家と一度はリタイアした推理小説界の大家がこの作品を巡り、対立する。
二転三転する2つの物語と、二重三重に仕掛けられたトリック。
歌野ワールドを存分に楽しんだあとの圧巻のラストシーンは読者を魅了すること間違いなし。
感想
ものすごい重厚感と重層感を兼ね備えたエンターテイメント小説。
この小説をひと言で表現するのであれば、私はこのように表現します。
そして最後に金縛りか放心状態が待っていると付け加えます。
私も読後しばらく言葉も出ませんでしたし、身動きすら出来ませんでした。
お腹の底に重たい鉛のかたまりを入れられたような感覚です。
「こんな小説よく思いつくな」というのが素直な感想です。
というのも本作は作中作の形式をとっています。本書の中で別の物語が進行しているというわけです。
その手法自体はよくある話なのですが、本書の中で展開される別の物語は江戸川乱歩の未発表作品という位置付けでした。
だからこそその物語の主人公は江戸川乱歩なわけですが、その相棒は萩原朔太郎という実際に存在した詩人を採用しています。
そしてこの物語の中で自殺を図る学生は萩原朔太郎の詩を朗読しています。
もうこれだけとっても「何がなんだか」という印象ですが、全く違和感なく、すっと物語に吸い込まれ、自分も事件の傍観者のような立場で事件を追いかけていきます。
このあたりが歌野ワールドの”なせる技”なのでしょうか。
また、ミステリー小説には読者を驚かせようというものが常に存在し、読者は読者でトリックを見破ろう見破ろうとするので、「著者vs読者」的な構図がどことなく存在します。
それが返って肩に力が入ってしまうのですが、本書はあまり先読みせず、今を追いかけようと思わせる小説だったように思います。
それだけ物語性が高い小説だったと言えます。
まただからこそ冒頭で本書のことをミステリー小説とはせず、エンターテイメント小説と読んだのかもしれません。
ちなみにこの物語の中で推理を主導するのは江戸川乱歩ではなく、萩原朔太郎の方です。
むしろ乱歩は朔太郎の推理を感心して聞いています。
このあたりもミステリー小説にはあまりないクスッとした笑いを提供しています。
そしてこの物語をめぐってアマチュア小説家と推理小説界の大家が対立し、駆け引きを演じます。
これがまたすごい!
もう本当にトリックを言いたくて仕方ありませが、もちろん我慢します。
いずれにしろわずか700円でこれだけ楽しませてくれる娯楽がどこにあるのでしょう。
そんな小説であることは間違いありません。
まとめ
この本に関してまず思うのがこの題名です。
「死体を買う男」
インパクトありすぎませんか。
加えて表紙です。
黒地に黄色い文字で「死体を買う男」となっています。
本書は講談社文庫から出版されているのですが、実はちゃんとした表紙があります。
講談社文庫に統一採用されているスタイルのものが。
この表紙にわざわざ被せる形で黒地に黄色文字の表紙がつけられています。
つまり二重表紙ということですね。
これは何か作中作、もしくは二重のトリックを暗示しているのでしょうか。笑
いずれにしてもあまりのインパクトに、むしろ手に取ることをためらいますが、一度手に取ったらもう止まりません。
歌野晶午ファンの一押しは「葉桜の季節に君を想うということ」(文春文庫)らしいのでこちらも読んでみようと思います。
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