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先日、瀬尾まい子さんが書かれた「卵の緒」を読みました!

おお!それは坊ちゃん文学賞を受賞した作品ですね!
まだまだコロナ禍ということもあり、在宅の時間が多いと思います。そんな在宅時間を有効に使って、たまには読書でも如何ですか?
ということで、今回は瀬尾まいこさんが書かれた小説「卵の緒」のご紹介です。
瀬尾まいこさんとは
1974年、大阪市生まれ。
地元の大谷女子大学(現在は大阪大谷大学)に進学。大学では文学部国文学科に在籍。
大学卒業後に中学校の国語教師に就く。
中学校で国語を指導する傍ら執筆活動を行う。
また中学校教師時代のことをエッセイにも記載している。
2011年に教師を辞め、執筆活動に専念。
本名は瀬尾麻衣子。
あらすじ
この本には「卵の緒」と「7’s blood」という二篇の作品が収められています。
そしてどちらも家族にまつわるお話となっています。
あとがきにも書いてあるとおり、著者の瀬尾さんは母子家庭で育ち、「家族」というものに強い憧れを持っていました。
この本では、そんな「家族」をテーマにしていろいろな「家族」の形を伝えてくれています。
一つ目の「卵の緒」は、お母さんと一人息子である育生(いくお)の成長を描いた作品です。
ある日、育生は帰宅したばかりのお母さんに自分の「へその緒」が見たいとせがみます。
実は日頃から育生は自分は捨て子だと信じていたからでした。
学校の先生から「へその緒」が家族の証だと教えられ、母親に確認しようと思い立ったわけです。
それに対してお母さんは最初こそ話をはぐらかすも、夕食の後に小さな箱を取り出して来て育生に手渡します。
育生がそっと開けるとそこには干からびた「へその緒」ではなく、白くつるんとした「卵の殻」が入っていました。
そのわけは・・・
二つ目の「7’s blood」は異母姉弟である七子と七生との短い共同生活を描いた作品です。
ある事件がきっかけで七子の家に七生が同居してきます。
二人の父親はすでに亡くなっており、七子は母親と二人暮らしでした。
そこにもう一人、それも子供とはいえ、”男性”が家族に加わることになります。
高校三年生の七子は初めて会う11歳の弟に戸惑いながらも育生の大人びた性格に助けられ、徐々に距離を縮めていきます。
そんなある日、七子の母親が入院することになり、二人だけの生活が始まります。
二人だけの生活になると相手の存在がより大きなものになります。
また、血のつながった弟を見ていると自分と同じところ、自分とは違うところが段々と見えて来るようになり、弟という鏡が自分を見つめ直すきっかけにもなりました。
ところが入院していた母親の死が二人を襲います。
母親との死別により一番身近な存在になった弟。
そこから二人の身に去来するものとは・・・
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感想
この本をひと言で表現すると「100%の女の子が書いた小説であり、男の子のための小説」です。
もちろん、小説にはいろいろな要素が含まれており、他にもたくさんの表現方法があるわけですが、私が一番強く感じたのがこのフレーズでした。
もちろん瀬尾さんはすでに○歳であり、もう女の子と呼ぶに相応しくないのかもしれませんが、紛れもなくこの本は100%の女の子が書いた本だと感じました。
特に後篇の「7’s blood」でそのことを強く印象づけられました。
ちなみに「100%でない女の子なんているんですか」という質問は野暮というものです。笑
言い換えると男(男の子)では絶対に書けない小説だということです。
そして作中に見られるその瑞々しい感性や思春期特有の迷いや不安定さ、物事の捉え方は素晴らしいものがあり、女の子特有の発想もそこにはあると思います。
このあたりは国語教師としての経験や観察眼が活かされているのかもしれません。
一方で、この本を男の子のための小説としました。
ここは100%の男の子である必要はありません。つまりいわゆる男性が読むべき本ということです。
なぜそう感じたのかというと、俗に「女心がわかっていない」とよく言われます。
私はこれについて多分そうだと思います。いや、絶対にそうだと考えています。
何かの記事である事象について男性の受け止め方と女性の受け止め方の違いというのを見かけました。
そこには驚くほどの差異があり、正直愕然としました。
私自身、男性の受け止め方に100%同意出来たわけですが、女性は女性で女性の受け止め方に100%同意していました。
この時、「女心がわかっていない」という言葉の意味を正確に理解することが出来ました。
この視点を持ってこの本を読んでみると「女性ってこういう風に考えるのか」「こんな捉え方もあるんだ」ととても勉強になることが多かったように思います。
いずれにしても変な表現かもしれませんが、私にとってこの本は「100%の女の子が書いた小説であり、男の子のための小説」ということになります。
まとめ
瀬尾さんの作品は今回初めて読みました。
非常に読みやすい文体ですし、登場人物ひとりひとりが何かを背負って生きているわけですが、最後は少しほっこりさせてくれる、そんな作品ですね。
この小説の中で気に入ったフレーズがいくつもあるのですが、その一つをご紹介します。
前篇の「卵の緒」の中でへその緒が入っているとされる箱を手渡され、育生が「開けていい?」とお母さんに問いかけます。
それに対してお母さんは「どうぞ」と答えます。
何気ないやりとりと言えば何気ないやりとりなわけですが、この時ここに流れる”空気感”のようなものを端的に表現しているように感じました。
すでに書いたとおり、私にとってこの本は「100%の女の子が書いた小説であり、男の子のための小説」です。
この表現はもちろん本作品の一面を切り取ったに過ぎません。
同世代の中高生や家族に飢えている人、もはや家族という存在が当たり前になってしまった人など、より多くの人に読んでもらえたらなと思います。
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